「まほうのえのぐ」の情報
「まほうのえのぐ」
作:林明子
出版社:福音館書店
発行日:1997年8月15日
おすすめ年齢:
読んであげるなら3歳から
自分で読むなら小学校初級向き
サイズ:H20×W27㎝
ページ数:32ページ
「まほうのえのぐ」はこんな子におすすめ
・お絵描きが大好きな子に!
・生き物が沢山登場する絵本を好む子に
・ファンタジーな物語が好きな子に
「まほうのえのぐ」の簡単なあらすじ
よしみは、お兄ちゃんの持っているえのぐで遊びたくてたまりません。
これは、まほうのえのぐだからダメだと言うおにいちゃん。
でも、よしみの強い気持ちに、とうとうえのぐを貸してくれました。
よしみは、喜んでえのぐを使います。すると、へびにえのぐを持ち去られてしまいました。
「まほうのえのぐ」のレビュー
お絵描き大好きな子、この絵本を読んでみて!
いつだって、子どもたちはお絵描きが大好きです。自分の好きなように表現できる、自己表現のひとつなのでしょう。
私は大学で、常に「子どもの絵に上手や下手は無いんだよ」と教えられてきました。子どもの絵が自己表現だとしたら、そこに「上手」や「下手」と評価を付けてしまえば、子ども自身のことを評価していることになってしまう、と思っています。
子どもたちには、伸び伸びと自由にお絵描きという表現活動を楽しんでもらいたいものです。
今回ご紹介するのは、お絵描きが大好きな子に読んでもらいたい、「まほうのえのぐ」という絵本です。
女の子が絵筆を持って正面を向いて笑っている、元気な印象を受ける表紙です。個人的には女の子の足元にいるうさぎが可愛くてお気に入り!
タイトル文字は、まるで油えのぐを混ぜたような、濃い不思議な色合い。「まほうのえのぐ」の魔法とは、どんなものなのでしょうか?
「まほうのえのぐ」は普通のえのぐ。混ぜるとどんな色になる?
冒頭、よしみはお兄ちゃんにえのぐを貸してもらいます。
ずっと使いたかったえのぐを貸してもらったよしみのキラキラとした笑顔といったらもう!林明子さんの描くいきいきとした子どもの表情に、さっそく引き込まれる瞬間です。
「まほうのえのぐ」というのは、お兄ちゃんがそう呼んでいただけであって、実はいたって普通のえのぐ。
「まほうの」と呼ばれるだけで、子どもたちの目には、とっても魅力的に映るのですから本当に魔法のようですね。
「まほうのえのぐ」は普通のえのぐ。色を混ぜると結果は、当たり前のように普通の結果となります。
でも、そのおかげで色を混ぜることの楽しさや不思議さを子どもたちは感じることができるのです。
青、黄色、赤、全部混ぜたらどんな色になるのでしょうか…?
・色水を混ぜる遊びが好きな子にもおすすめです♪
「まほうのえのぐ」は普通のえのぐ。だったはずなのに…?
よしみの後ろや背景にちらほらと隠れる、沢山の生き物の描き込みを見つけて楽しみましょう。森の中は特に沢山の生き物たちが!
あれ…?よく見ると、木もちゃんと生きています。表情の変化にまで注目してみましょう。
「まほうのえのぐ」は、普通のえのぐだったはずなのに…?物語の展開は、どんどんファンタジーに!
そしてよしみの画力も、気づいたらどんどん変化して、とても複雑な絵が描けるようになっているのです。
みんなお絵描き遊びが大好き!擬人化していない、リアルな生き物たちと遊ぶところが、ほどよいファンタジー。
現実に起こりうるのではないか、と感じられるような余白で子どもたちは期待し、絵本の展開にワクワクが止まりません。
絵本の展開が盛り上がり、楽しくて、嬉しさも感じる場面です。 みんなそれぞれ絵に違いがあって個性的!どの絵が好き?と子どもと一緒に話し合ってみましょう。
・日常の風景だったはずが、どんどん広がっていくファンタジーに目が離せない一冊♪
ファンタジーのきっかけはお兄ちゃん?安心して楽しめる秘密。
最初によしみが絵具遊びを始める場面、実は生き物たちは少しずつその後のファンタジーの準備をしています。
その準備が本格的になっていくのは、お兄ちゃんが居なくなってからなのです。
お兄ちゃんが居なくなるときから、少しずつファンタジーが始まっています。そして、どんどん深まっていくファンタジーが終わるとき、お兄ちゃんが迎えに来てくれるのです。
不思議な場所に行きっぱなしというのは、やっぱり子どもにとってはちょっとだけ不安。
誰かのもと、自分の本当の居場所に戻って来れるファンタジーは、子どもにとって安心できるファンタジーです。
好き勝手に遊んでしまったお兄ちゃんの「まほうのえのぐ」。こんなに使っちゃって大丈夫?と心配する子もいますね。
でも、最後のお兄ちゃんの反応が嬉しくて、みんなにっこりとすることでしょう。
お絵描きや、色水遊びで楽しもう!
「まほうのえのぐ」を読んだ後は、是非えのぐを使ってお絵描きをしてみましょう!
さきほど書いたように、子どもの絵に上手や下手はありません。自由な感覚で好きなように表現させてあげましょう。
周りが汚れてしまわないように準備するのは少し大変ですが、お絵描き遊びには準備の面倒を上回る楽しさと学びがあります。
少し大きな年齢の子がこの絵本を読んで、混色に興味を持ったなら、色水遊びもおすすめです。
絵具を水で薄めて色水を作り、色を混ぜてどんな色になるかを観察し、楽しみます。
発展すれば花びらから色水を作ったり、染物遊びをすることもできますよ。
遊びまでしっかりと発展させられる、「まほうのえのぐ」は、楽しいファンタジー絵本です。 是非絵本を読んで、お絵描きを楽しんでみてくださいね♪
「まほうのえのぐ」の読み聞かせのポイント
・絵本の描き込みをじっくりと見て、楽しみましょう。誰の絵が一番好き?と話し合うのも楽しいです。
・絵本を読んだら、お絵描きや色水遊びを楽しんでみましょう。