
「のせて のせて」の情報

「のせて のせて」
文:松谷みよ子
絵:東光寺 啓
出版社:童心社
発行日:1969年7月5日
おすすめ年齢:0歳から
サイズ:H21×W18.6㎝
ページ数:20ページ
シリーズ:松谷みよ子 あかちゃんの本
「のせて のせて」はこんな子におすすめ

・乗り物に興味のある子に
・動物が出てくる絵本を喜ぶ子に
「のせて のせて」の簡単なあらすじ
まこちゃんの自動車が、走ります。
「ブブー」
「ストップ!」
うさぎさんが、車に乗せてほしいみたいです。うさぎさんを乗せて、また車が走り出します。
どこへ向かうのでしょうか?
「のせて のせて」のレビュー
車の運転手!「のせて のせて」は子どもの憧れを描いた絵本

あなたは、車の運転はできますか?私は…、できないわけではないのです。ただ、代わりに運転してくれる優しい人が周りに多いのです。ペーパーにギリギリならないように、たまに近所を運転練習しています。
車の運転手は、子どもにとっては永遠の憧れです!!家族や周りの人々が運転している姿のなんとかっこいいこと!
乗り物に夢中になる子どもは、乗り物そのものだけではなく、運転することも合わせて憧れの対象のようなのです。
今回ご紹介する絵本は、赤ちゃん向けの車が登場する絵本。タイトルは、「のせて のせて」です。
子どもが本格的な自動車を運転している!乗り物好きの子どもにとって、夢のようなテーマの絵本です。
主人公の名前は、「まこちゃん」です。男女限定されない名前を選んでいるところが、皆がこの絵本を楽しめるポイントでしょうか。
「のせて のせて」と、繰り返しが楽しい!

これまで何冊も赤ちゃん向け絵本をご紹介してきていますが、良い赤ちゃん絵本では、必ずといっても使われている表現があります。
それは、繰り返し表現!「のせて のせて」でも、もちろん繰り返し表現が登場します。
「びゅーん」と車を走らせ、
「ストップ!」と、動物が車を止めて、
「のせて のせて」と車に乗りこむ。
絵本の構成は、この繰り返しがメインの、簡単な構造です。
赤ちゃんにとっては、このシンプルな繰り返しが絵本を楽しむポイント!短期的な記憶力がついてきた赤ちゃんは、同じパターンを繰り返すことで、次の展開を予想します。
また、「ストップ!」ってなるのかな…?
その予想が正解することが嬉しく、成功体験を積み重ねることで、絵本が好きになっていくのです。
「ストップ!」で作り出すことばのリズム

先ほどもお話したように、何度も繰り返し出てくることばに、「ストップ!」があります。
海外の絵本を翻訳したものの場合、原作の雰囲気や音の響きをこわさないために、あえてことばをカタカナにしてそのまま利用することがあります。
ですが、「のせて のせて」は日本で生まれた絵本です。どうして、「ストップ!」なのでしょうか?待って!とか、止まって!とかではなく、「ストップ!」ということばを選んだ理由を考えてみました。
たぶん「ストップ!」が一番ことばのリズムが良かったのだと思います。
待って!や、止まって!よりも、「ストップ!」のほうが少し緊迫感があり、絵本全体のリズムが引き締まる。引き締まることによって、その後の動物が登場する展開がさらに楽しくなる。
「ストップ!」は、そんな相乗効果を狙ったことばの選択ではないでしょうか。
また、「のせて のせて」は絵本全体を通して軽やかな疾走感があります。そのスピード感を一旦停止するのにも、「ストップ!」のことばがちょうどいいのでしょう。
デフォルメしすぎない絵に興味津々!

「のせて のせて」の絵本に描かれている絵をよく見ると、あまりデフォルメされていないことに気づきます。
主人公のまこちゃんが運転しているのは、真っ赤なオープンカー!とってもおしゃれで、細かい機械の部分までしっかりと描かれ、とてもメカニック。乗り物に興味のある子どもは、夢中になって眺めることでしょう。
また、動物たちもとても愛らしい表情をしていますが、完全にデフォルメされているわけではありません。
注目は、くまさんの手足!
顔はとっても可愛いのに、手足に生えている爪は、ものすごく長いのです。
本物の熊は、もちろん爪が長い。
「のせて のせて」は子ども向けの絵本ですが、あえてそのまま描くことによって、子どもに「本物」を伝えています。
爪の長いくまさんですが、一緒に車に乗り込んで、楽しくドライブ!ほどよいデフォルメとファンタジー、それが相まって楽しい絵本「のせて のせて」の世界観を作り出しています。
暗いのは不安。でもちゃんと明るくなるから嬉しい!

絵本「のせて のせて」のクライマックスには、トンネルが出てきます。それまで明るかったのに、突然真っ暗になる画面に、赤ちゃんは少し不安に。
でも、トンネルの外に出れば、ちゃんと元通り、明るい世界が戻ってきます。
そして、「おひさまだ!」のことばと、おひさまにも負けないみんなの笑顔!読んでいるこちらも嬉しくなる展開です。
トンネルの場面は決して長いものではありませんが、赤ちゃんにとってはハラハラドキドキ!
真っ暗なトンネルの存在が、赤ちゃん向け絵本として、ちょうどいい不安感と安心感を演出してくれています。
「のせて のせて」は大きくなっても楽しめます!

「のせて のせて」は、0歳の赤ちゃんから楽しめる絵本ですが、もちろん赤ちゃんだけのものではありません。
赤ちゃんが楽しいのは、主に絵本を読んでくれる大人とのかかわりです。
大好きな大人が、絵本を持って自分に話しかけてくれている!それが赤ちゃんの絵本の楽しみ方です。
では、少し大きくなってからはどうでしょうか?
絵本の内容を理解しはじめる時期になると、更に「のせて のせて」の楽しさは倍増!
車を運転することへの憧れ!
動物が一緒に乗り込んで、来てくれることのうれしさ!
この車はどこへ行くのかな?想像することの楽しさ!
これらの楽しさを味わえる、3歳頃まで、十分現役で活躍してくれる絵本ですよ♪長い期間楽しめる、「のせて のせて」、是非読んでみてくださいね!
「のせて のせて」の読み聞かせのポイント

・スピード感ある絵本ですが、早口にならないように。でも、「ストップ!」のことばは少しはっきりと読みましょう。
・トンネルを抜けた嬉しさを、明るく声に出して表現してみましょう。
・少し大きい子なら、この車がどこに向かうのか想像して話し合ってみましょう。
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絵:瀬川康男
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おすすめ年齢:0歳から
・動物がたくさん出てくる絵本を喜ぶ子に
・繰り返しの表現が出てくる絵本を楽しんでいる子に
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