「うさこちゃんのえほん」シリーズは、実に世界中で愛されているオランダの絵本作家ディック・ブルーナさんの作った絵本シリーズです。
子どもからも大人からも大人気のうさこちゃん!今回は彼女がなぜ愛され続けているのか、秘密を探っていこうと思います。
私が見つけた愛される秘密は。5つ!
- うさこちゃんの世界を彩る色の魔法
- いつでも正面を向くうさこちゃん
- シンプルな世界だからこそ生まれてくるものがある
- 共感できるうさこちゃんの日常
- リズムの良いことばで紡ぐ物語
これからこの5つの秘密について、お話していきたいと思います。
まず知っておきたい、ちょっと気になるうさこちゃんのお話
秘密をお伝えするその前に…うさこちゃんについてちょっと気になるお話をまずは少しだけお話します♪
うさこちゃん?ミッフィー?
うさこちゃんの絵を見たときに、こう思いませんでしたか?
あれ、このうさぎさんって、『ミッフィー』って名前じゃなかったっけ…?
それ、正解です!両方同じうさぎさんの名前です。
「ミッフィー」は、英語版で翻訳された名前です。この名前は世界中に広まり、日本でも馴染み深い名前となっています。
そして、「うさこちゃん」は日本語版に翻訳されたときに付けられた名前。
実は、うさこちゃんの絵本を最初に翻訳したのは日本なんです。なので、「ミッフィー」の名前よりも「うさこちゃん」の名前のほうが先に生まれていたのですね。
ちなみに、本家オランダ語では「ナインチェ」という名前です。意味は、そのまま「うさちゃん」というイメージのお名前だそうです。
うさこちゃんの顔の「×」の秘密
世界中のファンや子どもたちが愛してやまないうさこちゃん。「×」の形をした口がとってもチャーミングですね。
うさこちゃんのモデルとなったウサギは、作者が休暇を過ごした家の庭にいた子らしいです。
そしてこの「×」の口は、作者のブルーナさんから見えた、うさぎの鼻や口の部分だそうです。
どうですか?同じように見えてくるような…。
また、うさこちゃんのお父さんやお母さんの口は、「*」の形ですね。この一本多い横線は、シワの表現らしいですよ。こんなに愛らしいシワなら、なんだか悪くないかもしれませんね。笑
どうですか?可愛いうさこちゃんの、ちょっと気になるお話でした。
それでは、本題!うさこちゃんのえほんの愛され続ける5つの秘密についてお話いたします!
いよいよ本題!うさこちゃんが愛される5つの秘密
うさこちゃんの世界を彩る色の魔法
うさこちゃんの絵本は、一目見ただけでそれとわかるほど、色使いが特徴的です。
実はこれは赤ちゃんが見やすい色使いの工夫なのです。
うさこちゃんの世界には、淡い色は存在しません。原色ともいえるはっきりとした色は、赤ちゃんの目でも認識しやすい色です。大人の目から見ても色鮮やかで、楽しい気分になれますね。
また、使われている色の数にも秘密があります。
うさこちゃんや物を縁取る黒の他に使用されている色は、基本的に白、橙に近い赤、青、黄、緑の5色のみとなっています。(動物の色の表現のため、茶色やグレーなど他の色を使用している作品もあります)
赤ちゃんの絵本の情報量は、これくらいシンプルな方がわかりやすいのです。
通称「ブルーナカラー」と呼ばれるこの色は、作者のディック・ブルーナさんがこだわりぬいた色彩です。
彼の描いた絵本は、うさこちゃんの登場しない作品でもこの色が採用されています。
使っている色の数が少ないからといって彼の表現力が損なわれることはありません!むしろ驚くほど絵本の中の世界は鮮やかに彩られています。
いつでも正面を向くうさこちゃん
うさこちゃんの絵本をよく見てみると、登場する生き物のほとんどが正面を向いていることに気づきます。
これは、ブルーナさんのいつでも子どもたちとまっすぐに向き合っていたい、というメッセージが込められています。
また、これは赤ちゃんにとって見やすい絵の特徴にもなっています。
赤ちゃんは他の物よりも、「顔」の認識能力が高いといわれています。そういえば、抱っこしているときによく目が合うような気がしませんか?
顔の認識は、赤ちゃんにとって生きていくために重要なこと。
正面を向いていて目があって口が見える、というのは良い赤ちゃん絵本の特徴なのです。
シンプルな世界だからこそ生まれてくるものがある
うさこちゃんの世界は、とってもシンプルにできています。余計な線をなるべく減らすことで、生まれてくるものがあるのですよ。
それは、読者が想像できる余白です。
描かれていない余白の部分に、読み手が自分なりの解釈を持ち、想像することでうさこちゃんの世界はどこまでも広がっていきます。
たくさん描かれていることは、良い面ばかりではありません。
うさこちゃんの絵本は、あえて減らすことで豊かな表現となっているのです。
また、先ほど赤ちゃんが見たいのは「顔」であるとお話しましたね。 余分な背景が描かれていないので、赤ちゃんが一番見たい「顔」がよく見えるのです。
共感できるうさこちゃんの日常
うさこちゃんの物語に選ばれている題材は、本当の子どもの生活でも体験するような日常です。
ファンタジー絵本を楽しみ始める準備段階の子どもは、自分の知っていること、知っているものが沢山出てくる絵本を好みます。
その方がわかりやすく、物語に共感できるのです。
また、うさこちゃんの物語は、お話の途中で悲しい出来事が起こったとしても最後はハッピーエンドで終わります。
子どもたちの人生は、この先きっと山あり谷ありです。悲しいことがあっても、必ずいつか嬉しいことが待っている、そんなメッセージを絵本から感じ取ってみてください。
リズムの良いことばで紡ぐ物語
うさこちゃんのえほんの文章が書いてあるページを見てみると、まるで文字が横長の長方形で囲われたようにきれいに収まっています。
どのページを見ても行の数は4行です。これには何か秘密が隠されていそうですね。
試しに口に出して文章を読んでみましょう。うさこちゃんのえほんは、あまりオノマトペ(擬音語等)が多用されているわけではありません。なのに不思議なことに、リズミカルに読めるような気がしませんか?
どのページも、文量がほぼ同じに統一されているのも、絵本全体のテンポ感が安定するポイント。リズムが安定することで、読み聞かせの安心感が増しています。
赤ちゃん向けの絵本の中でも、「うさこちゃんのえほん」シリーズは比較的文の量が多い傾向がありますが、このリズム感の良さで赤ちゃんも飽きずに物語を楽しむことができます。
うさこちゃんのえほんの翻訳は、最初はいしいももこさんが、後に松岡享子さんが引き継いでいます。
ふたりとも、うさこちゃんの世界を汲み取った、柔らかくて魅力的な日本の「うさこちゃん」を作り出しています。
いつまでも色あせない、うさこちゃんの物語を是非楽しんで!
いかがでしたでしょうか。うさこちゃんのえほんが愛される秘密がわかりましたね!
作者のディック・ブルーナさんは、惜しまれつつも2017年に亡くなられました。
ですが、彼の生みだしたうさこちゃんの作品は、いつまでも色あせません。
いつだって子どもたちや大人にまで愛される「うさこちゃんのえほん」を、これからも沢山読んでみてくださいね。
絵本ナビでは、可愛いミッフィーのグッズが沢山販売されています!
ぬいぐるみ、おもちゃ、食器、ステーショナリー…。
どれもとっても可愛いので、是非チェックしてみてくださいね♪
「うさこちゃんのえほん」レビュー記事
「ちいさなうさこちゃん」
文・絵:ディック・ブルーナ
訳:いしい ももこ
出版社:福音館書店
おすすめ年齢:1歳から3歳向き
・大切な子に愛情をたっぷり伝えたいときに
・寝かしつけの時間の一冊に
「うさこちゃんとうみ」
文・絵:ディック・ブルーナ
訳:いしい ももこ
出版社:福音館書店
おすすめ年齢:1歳から3歳向き
・簡単なストーリーのある物語を楽しめるようになってきた子に
・海での遊びを楽しんだことのある子に
・お父さんが子どもに読み聞かせをしてあげたい時に
「うさこちゃんのたんじょうび」
文・絵:ディック・ブルーナ
訳:石井桃子
出版社:福音館書店
おすすめ年齢:2歳から
・もうすぐ誕生日を迎える子に、誕生日が過ぎたあとでもおすすめです
・周りの愛情を沢山受け取って育つ子に
「うさこちゃんとふえ」
文・絵:ディック・ブルーナ
訳:松岡享子
出版社:福音館書店
おすすめ年齢:3歳から
・音楽が好きな子や、もっと興味を持ってもらいたい子に
・簡単なストーリーのある絵本を楽しむことができる子に