「わたし」の情報
「わたし」
文:谷川俊太郎
絵:長 新太
出版社:福音館書店
発行日:1981年2月2日
おすすめ年齢:
読んであげるなら4歳から
自分で読むなら小学校初級から
サイズ:H25×W22㎝
ページ数:28ページ
「わたし」はこんな子におすすめ
・自分と、自分以外の人がいることがわかってきた、全ての子に
・自分自身に、もっと興味を持ってもらいたい子に
「わたし」の簡単なあらすじ
わたし。
男の子から見ると、わたしは女の子。
赤ちゃんから見ると、わたしはお姉ちゃん。
他にも、色々な視点から「わたし」を見てみよう。
「わたし」のレビュー
「わたし」って一体どんな人?
今回ご紹介する絵本のタイトルは、「わたし」です。絵本界の天才の、谷川俊太郎さんの文と長新太さんの絵から作られている名作絵本!
小さな子どもにとっては、自分と周りのひとの区別があまりはっきりとはついていません。
自分から見えているものは、他の人にも見えているだろう、と思っていたり、自分が好きな物は、他の人にとっても素敵なものだろう、と思っていたり…。
この絵本の対象年齢である、4歳頃になってやっと、自分以外の人は自分とは違う、ということがわかり始めます。
絵本「わたし」を通して、「わたし」のことをもっと見つめてみましょう。
色々な視点から「わたし」を見てみよう。
絵本の構成は、シンプルです。
「わたし」が、他の人から見たらどんな人なのか、そして、どんな風に呼ばれているのかが絵本に書いてあります。
わたしは、どこにいても誰の前でも、間違いなく「わたし」です。
わたしはひとりだけれども、他の人から見ると色々な呼ばれ方がある、ということに気づきます。
子どもながらに、なんとなく気が付いてはいるけれど、絵本に丁寧に書かれていることで、「わたし」と他の人との関係が見えてきます。
シンプルだけど奥が深い絵の魅力
赤ちゃん絵本を卒業して、4歳以上向けの絵本になってくると、背景の描き込みが丁寧に描かれている絵本が増えてきます。
絵本の絵を集中して眺めることができる子が増えてくるためで、一冊の絵本をより深く楽しむことのできるための工夫です。
ところが「わたし」で描かれている絵は、とてもシンプルで、背景は描かれていません。
長新太さんが、いつもそういった絵を描いているのかというと、そうでもありません。背景をしっかりと描いている絵本も存在しています。
では、どうして「わたし」はこんなにシンプルに描かれているのでしょうか。
それは、他の要素を削って、「わたし」に注目できるようにするためです。この絵本で見てほしいのは、背景の描き込みではなく、あくまでも「わたし」です。
「○○からみると」という○○を分かりやすくするために、画面の右側には描かれていますが、知ってほしいのは「わたし」のこと。
余計な情報を極力減らし、伝えたいことだけを伝えられるように工夫されているのです。
画面の左側には、常に「わたし」がいます。
笑っているのも、「わたし」。
無表情でも、もちろん「わたし」なのです。
子どもにもわかりやすい描き分けがすごい
絵本の特性上、沢山の種類の人が登場します。それらの人々を、背の高さや顔の輪郭など、特徴や違いを絶妙に描き分けています。
こんなおばあちゃんいるよね、こんなおじさんもいるね、と、子どもにもわかりやすい絵となっています。
また、きりんはこれでもかと大きく描かれています。そして、ありはよく見てもわからないほど小さく描かれている、この対比もポイントです。
「わたし」は1981年出版!現代にも通じる多様性
40年も前に出版された絵本ですが、現代にも通用する多様性が描かれています。注目すべきは、「わたし」のお母さんとお父さん。
お母さんの絵を見てみると、お母さんは新聞を読んでいるようです。次に登場するお父さんを見ると、エプロンをつけて料理をよそっている場面のようです。
1981年、当時はきっと、お父さんが新聞を読みお母さんが料理をすることが当たり前の時代だったでしょう。
今だって、「男は働き、女は家を守る」という風潮が完全には消え去ってはいない世の中です。
絵本「わたし」は、現代にも通じる多様性のあり方を訴えています。
「わたし」についてもっと考えてみよう。
「わたし」を読むと、同じ「わたし」でも色々な姿があることに気づかされます。
あの人から見たら、「わたし」はどんな存在なんだろう?この人から見たら、「わたし」はまた違う存在なのかもしれない。
そんな風に、もっと「わたし」のことを考えるきっかけになってくれる絵本です。
是非、「わたし」を読んで子どもと一緒になって考えてみましょう。
「わたし」の読み聞かせのポイント
・感情の起伏は必要ありません。淡々と、でも丁寧に読み聞かせてあげましょう。
・「○○から見たら」、「わたし」は何だと思う?と一緒に考えてみましょう。
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