「とん ことり」の情報
「とん ことり」
作:筒井頼子
絵:林明子
出版社:福音館書店
発行日:1989年2月10日
おすすめ年齢:
読んであげるなら4歳から
自分で読むなら小学校初級向き
サイズ:H20×W27㎝
ページ数:32ページ
「とん ことり」はこんな子におすすめ
・手紙を書いたり受け取ったり、郵便屋さんごっこをするのが好きな子に
・春の暖かい季節の読み聞かせに
・引っ越しを経験したことのある子に
「とん ことり」の簡単なあらすじ
山の見える街に引っ越してきたかなえは、荷物の整理の手伝いをしています。疲れて座り込んだとき、かなえは小さな小さな音を聞きました。
「とん ことり」
郵便屋さんかな…と玄関を見に行くと、郵便受けの下に落ちていたのは、すみれの花束でした。
「とん ことり」のレビュー
引っ越しは不安。でも素敵な出会いのはじまり!
子どもの頃、引っ越しを経験したことはありますか?私は、小学校1年生から2年生になるときに、引っ越しをして学校も転校になりました。
子どもながらに不安で、引っ越し直前になって突然泣き出してしまったことを覚えています。でも、引っ越しのすぐ後に、友だちが出来ました。少しのきっかけですぐに仲良くなれてしまうのは、子どもの特権でしょうか。
今回ご紹介する絵本、「とん ことり」は、主人公のかなえが引っ越してくるところからはじまります。
何やら不思議なことば、「とん ことり」とは、どういう意味なのでしょうか。たんぽぽを握って扉の外を眺める、かなえを通して謎が深まっていきます。
「とん ことり」と届く、秘密の贈り物。誰から?
主人公のかなえは引っ越してきたばかり。初めて見る、歩く土地で、不安げな彼女の表情が見事に表現されています。
かなえにとって、何もかもが知らないもの、知らない人ばかり。そんな彼女に、郵便受けに秘密の贈り物が届きます。
「とん ことり」とは、その秘密の贈り物が届くときの音。タイトルの響きまで素敵な物語です。
かなえに届く贈り物は、すみれにたんぽぽと、春に咲く花。そして、新しい季節にやってくる出会い。新しいお友達。
春の時期の読み聞かせにおすすめな絵本です。
「とん ことり」は知らない誰かを思う気持ちを描く。
かなえは贈り物をしてくれる相手が気になって仕方がありません。街を歩くときも、おはじきで遊ぶときも、いつも考えています。
大人でも複雑な、“知らない誰かを思う気持ち”を、子ども目線で表現している、すごい作品です、
そして、こっそり贈り物をするあの子も、かなえのことを思っています。
お互いのことがわからないけれど、思い合っている。子ども向けといって侮ってはいけない、深いテーマです。
かなえが最後に貰った贈り物は、本文でははっきりと描かれていませんが、裏表紙で見ることができます。本当は仲良くなりたい、そんな気持ちが詰まったとっても可愛らしい贈り物です。
いきいきとした表情に引き込まれる!
「とん ことり」の絵を描く、林明子さんは、とにかく子どもの表情を描くのが得意な作者さんです!
幼稚園を見に行く場面、いきいきと遊ぶ子どもたち!中にはかなえが気になって少し恥ずかしそうに見ている子も。
子どもたちの表情を愛らしく描く、林明子さんの魅力が存分に描かれた場面です。
そして何といってもおすすめなのが、最後の2場面!ここには文章がありませんが、本当にその場面を目の前で見ているかのような表現力です。
・特に最後の、文章の無い2場面は必見!!
「とん ことり」の描き込みに注目!あの子の初登場はどこ?
林明子さんは、絵本の絵にこっそりと秘密を隠すのが上手。よく見ると、他の作品に登場していた人が描かれています。
商店街の場面を探してみましょう。あれ、この人…他の絵本にも出ていたような?実は筒井頼子さんと林明子の合作絵本に、何度も登場している人がいるのです。
そして、もっと探してほしいのが、“あの子”です!ずっとかなえに贈り物をくれていたあの子、最初に登場していたのはどこでしょうか。
幼稚園?いえいえ…もっとずっと前。よく見ると、あそこにも、ここにも!ずっとかなえのことを気にして、かなえのことを見ています。探してみてくださいね。
知らない誰かを思う気持ち、「とん ことり」は、とっても深いテーマを描いた絵本です。
是非読んでみてくださいね。
「とん ことり」の読み聞かせのポイント
・「とん ことり」という音は、小さく、でも魅力的に読んでみてあげましょう。
・最後の場面は、文章はありませんが、この絵本の一番楽しいところです。じっくりと眺める時間を大切にしてくださいね。
・贈り物をくれる“あの子”は、どこに登場しているかな?絵本の描き込みを見つけて楽しんでみましょう。
作者の他の作品
いもうとのにゅういん
作:筒井頼子
絵:林明子
出版社:福音館書店
おすすめ年齢:
読んであげるなら3歳から
自分で読むなら小学校初級向き
・仲良しの姉妹がいる子に
・大切なぬいぐるみやお人形を持っている子に
・お父さんの読み聞かせにもおすすめです
はじめてのおつかい
作:筒井頼子
絵:林 明子
出版社:福音館書店
おすすめ年齢:
読んであげるなら3歳から
自分で読むなら小学校初級向き
・おつかいに興味が出てきた子や、興味を持ってもらいたい子に
・絵本の絵をじっくり見ることが好きな子に